鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
翌日、酔いが醒めた父から改めて婚約する気はないかと言われたが、断った。

恋愛よりやりたいことがたくさんあるのに、今から結婚を考えたくない。

いずれ結婚するにしても相手は自分で見つけたいと思ったからだ。

父は『わかった』と言ってくれたので立ち消えになったと思っていたのだが、絢乃の側は違ったようだ。

父の命日に線香を上げにきた山城建設の会長が、生前の約束を守らせてほしいと母に頭を下げて頼んだそうだ。

『お見合いというかしこまった場じゃなくて、あちらのお嬢さんと一度食事をしてみて、それから考えてみるのはどう? お写真を置いていかれたんだけど、すごくきれいな方よ。会社にとっても悪い話じゃないと思うわ』

専業主婦だった母でも、この結婚で得るメリットが大きいのはわかるようだ。

昴も学生だった頃とは違い、頭の中で利益を計算して会うことを決めた。

その電話の翌月、ホテルのレストランで山城建設の会長と絢乃と三人で食事をした。


会長とは仕事で何度か話したことがある。

父の葬儀にも参列してくれて、お礼を言った記憶はまだ新しい。

絢乃とは初対面で、聡明な美人という印象だった。

意志の強そうな目をしているのに父親の顔色を窺っているような雰囲気もあって、それが気にかかった。

決して崩れない上品な笑みは、彼女の本心を隠す鉄仮面。

仕事や経済について話す中で彼女に感じたのはクールさだったが、なぜか本当の彼女はもっと素直で感情豊かに笑ってくれるはずだと思った。

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