鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
母親が病気で他界したのは十九年前、絢乃が十一歳の時だったという。

父親には愛人がいて子供まで作り二重生活をしていたそうで、そのせいで母親は随分と悩み苦しんでいた。

母親の死は父親のせいだと、絢乃を含めた母親側の親族は思っているそうだ。

それだけで十分に同情するが、喪が明けないうちに父親は愛人を後妻として迎えた。

二歳の娘も一緒で、絢乃は母親を亡くしたばかりなのに恨むべき相手を『お母さん』と呼ばなければならず、急にできた妹を可愛がるようにも言われた。

そんな彼女を不憫に思った和志の両親が引き取ってこちらで育てたいと交渉したそうだが、絢乃の父が拒否したため叶わなかった。

後妻が嫌がるのを理由に母親の位牌の管理だけ任されたという。

「そうだったのか……」

母を失った悲しみと、受け入れたくもない相手と家族になってともに生活しなければならない苦しみ。

それを十一歳の子供に味わわせるとは、非道という言葉しか浮かばない。

山城建設を一代で業界最大手にした義父の才能は尊敬するが、夫、父親という面からみると残念感が広がった。

「相当つらかったろうな」

月並みな台詞しか出てこないが、絢乃の心痛は察するに余りある。

しかしそれだけではないようで、和志が嫌そうに眉をひそめた。

「しかも継母と妹がさ、なんていうか昔話に出てくるような意地悪な連中なんだよ。絢乃が中学生の頃に一度だけ会ったことがあるんだけど――」

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