鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
月命日に絢乃が母の実家に拝みに来て、夜遅くなったので和志が自宅まで送っていった。

すると継母にこう言われたそうだ。

『あら、帰ってきたの?』

『お母さん、遅くなってすみませんでした』

『いいのよ。いなくなったとしても捜さないから。あなたが出て行ってくれたら、家族だけで暮らせるのに』

なんてひどいことを言うのかと和志が食ってかかろうとしたら、絢乃に止められた。

『慣れてるから平気』

そう言って微笑んだ絢乃の目が冷え切っていたと、和志がつらそうに教えてくれた。

「妹も嫌がらせしていたみたいなんだ。絢乃は口に出しては言わないけどな」

和志があげた誕生日プレゼントを『壊されちゃってごめんね。部屋に鍵をかけ忘れていたの』と絢乃に謝られたことがあったそうだ。

継母と妹の虐めに耐えた子供時代。聞くだけで胸が痛い。

「父親は知らないのか?」

「軽く注意する程度だとよ。あの親父は絢乃には厳しいくせに、妹は甘やかしてるらしいぞ。諸悪の根源だよ。絢乃が山城建設に入社するって言った時、止めたんだ。大人になってやっと自由に生きられるのに、なんでわざわざ親父が支配する会社に入るんだって。まぁ、絢乃なりの考えがあるんだろうけど」

自分が和志の立場だったとしても同じアドバイスをしただろう。

(なぜ父親とは別の道に進まなかったんだ? 彼女ならどんな企業の採用試験も受かる気がするんだが)

生い立ちを知ると、謎がまた増えた。

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