鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
なんとなく理由がわかったからといって彼女への興味は薄れない。

それどころかもっと知りたくなる。

駅の改札機に携帯をかざしながら自分に問う。

(妻だからか?)

『これが運命ってやつかと思った』

照れくさそうな顔の友人の言葉を思い出して心臓が波打つ。

(俺の運命の相手は絢乃さんかもしれない)

赤い糸を信じる性格ではないというのに、一緒に夏を楽しんだ子供の頃にはすでに結婚する未来が決まっていた気がした。



* * *



新婚生活は十日を過ぎたのに、夫との距離感は初日と変わらない。

週末は絢乃が出かけていたのでゆっくり会話する時間は取れず、平日は朝晩の挨拶程度しか話していない。

金曜の朝七時、オフィススーツに着替えた絢乃はメイクをして自室を出た。

(資料がまだ送られてこないわ。まさか忘れてるの? あれが間に合わないと今日の会議は中止よ)

頭の中ではすでに仕事を始めていた。

ノートパソコンが入った重たいショルダーバッグを肩にかけて廊下を進む。

心配事があるせいで頭が少し痛む。

会社に着いたら常備している頭痛薬を飲もうと思いながらバスルームの前に通りかかると、ドアが開いてシャワー上がりの昴と鉢合わせた。

表情には出さないが、息が止まるほど驚いている。

ルームウェアのズボンのみで、上半身が裸だったからだ。

トレーニングマシンを部屋に置いているだけあって無駄な脂肪はなく、引き締まった筋肉が美しい。

腹筋は割れていて、まるでアスリートのような体形だ。

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