鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
異性の裸を直視したのは初めてで言葉が出ない。

(どうして裸なのよ)

「おっと。ごめん」

謝ってくれたが口調は軽い。

大したことだと思っていないのだろう。

バスルームに引き返そうとはせず、その場で濡れた髪を拭いている。

「もう出るの?」

「え、ええ」

「早朝会議?」

「早く行って確認したいことがあるだけよ」

高まった鼓動はなかなか静まらない。

なぜか立ち止まったままの昴から爽やかなボディソープの香りがする。

たくましい筋肉を覆う小麦色の滑らかな肌を見ていられずに目を逸らした。

(どうして動こうとしないの? まさか、私を動揺させて楽しんでるの?)

心の中での非難は的外れだった。

「着替えを出すのを忘れていたんだ。そこ、どいてくれる?」

「あっ」

この家にはウォークインクローゼットがふたつある。

昴用のものの扉は絢乃の背後で、邪魔していたのは自分だった。

「ごめんなさい」

一歩下がって場所を空けると、彼が素敵に微笑む。

「仕事、頑張って。いってらっしゃい」

クローゼットの中に彼が消えて扉が閉まると、胸に手を当てて深呼吸した。

(半裸くらいで驚いているようじゃ、子供を作れないわよ。しっかりしないと)

一度、体の関係を断られているが、諦めてはいない。

早く子供を作って離婚したいからだ。

ルームシェアのような今の生活は思っていたよりストレスはないけれど、結婚自体にいいイメージを持てない。

< 46 / 237 >

この作品をシェア

pagetop