鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
『地盤調査会社の近藤様とのお約束は十五時からとなっております。そのあともスケジュールが詰まっておりますので、今お昼休みを取られた方がよろしいかと思います』

朝食は自宅でのロールパンひとつとカップスープだ。

それ以降はコーヒーしか口にしていないので空腹だが、のんきに食べていられない。

急なトラブル対応があったため、今日は山積みの稟議書をひとつも決裁していなかった。

期限に余裕があるものでも早めに処理しないと落ち着けない性分なのだ。

大野の提案がいらない気遣いに思えてため息をついた。

「昼食は取らない。二度、同じことを言わせないで」

『申し訳ございません』

「ホットコーヒーだけお願い。シュガーは三つね」

『かしこまりました』

糖分を取れば煩わしい空腹を紛らわせることはできる。

すぐに秘書が持ってきてくれた甘いコーヒーを飲み決裁待ちの稟議書に目を通していると、通勤バッグの中で私用の携帯が鳴った。

マナーモードにし忘れていたようで、バッグを膝にのせて携帯を取り出す。

友人がほとんどいないので私用の携帯はあまり鳴らない。

どうせカード会社か携帯会社からのお知らせだろうと思って画面を見ると、昴からのメールで目を瞬かせた。

(なにかしら。仕事で遅くなるという連絡?)

この前、絢乃に急な会食予定が入ったため、彼にその旨をメールした。

心配はしないだろうけど、一緒に暮らしているので一応知らせた方がいいかと思ったのだ。

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