鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
だから彼も同じように連絡をくれたのだろうと予想して文面を読み、また意表を突かれた。

【おつかれさま。今夜、一緒に食事できないか?】

(ふたりで?)

夫婦だけで食事をしたのは、同居初日のフランス料理店だけだ。

それ以外で誘われたことはなく、宛先を間違えたのではないかと思って返信する。

【私宛のメールで間違いない?】

すぐに答えがくる。

【もちろん。絢乃さんを誘っている。先約がある?】

【ないわよ。十九時半までに退社するから、それでいいなら行けるわ】

【自宅で待ってる】

マナーモードに設定した携帯を片手に、食事に誘われた理由を考える。

(誰かに妻と食事しないのはおかしいと指摘されたとか? それとも一般的な夫婦らしい関係を築きたくなったのか……)

早く子供がほしい絢乃にとって後者ならありがたいが、違うだろう。

ネグリジェ姿で体の関係を求めた時、抱かないとはっきり言われたのはまだ記憶に新しい。

夫婦生活を再考するほど日にちは経っていないのだから。

(どうしたらその気にさせられる?)

自分の容姿は悪くないとは思うけれど、女性としての魅力不足は自覚している。

恋愛したいと思う暇もない人生なので、色気の出し方がわからない。

(面倒でもひとりくらい男性と付き合っておけばよかったわ。今さらだけど)

昴の鼓動を高まらせるにはどうすればいいのかと真剣に悩む。

パソコン画面には新たな稟議書が送られてきた通知が現れたが、仕事に気持ちを向けられなくなってしまった。

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