鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「いいアイディアね。うさちゃんは頼りになるわ。いつも助けてくれてありがとう」

こうやって親友と話すことで第三者的な目線でぶつかっている問題を見ることができ、自分の気持ちも整理できる。

子供の頃からの不安解消法だ。

きっと今後も一番の相談相手はこのマスコット人形だろう。

心の拠り所である親友に微笑みかけると、ノックの音がした。

「社長、地盤調査会社の近藤様とのお約束のお時間です」

秘書の声に肩を揺らし、焦って親友をポーチにしまう。

「今行くわ」

うさぎのマスコット人形と話している姿は誰にも見せられない。

三十歳にもなって恥ずかしいことをしているのは百も承知だ。



なんとか仕事を切り上げて約束の十九時半に退社した。

タクシーに十五分ほど揺られ、自宅のあるマンションに着く。

外食先で待ち合わせた方が時間に無駄がないのに、なぜ家で待っていると言われたのだろうか。

上昇するエレベーターの中でその理由を考える。

(この前、十分くらい遅刻してしまったから?)

少しも気にしていないようなことを言っていたが、内心では不満だったのだろうか。

急に誘った今日はもっと遅れるか、もしくは仕事が終わらずキャンセルされる可能性を考えたのかもしれない。

(仕事がルーズなイメージを持たれてしまったのかも)

みくびられているのではないかと勝手な想像をして顔をしかめた。

最上階の自宅前に着き、電子錠を解錠してドアを開ける。

それと同時に口角を無理やり上げて笑みを作った。

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