鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「え、どうやって?」

「こんな感じ」

周りにはみ出した生地や具材をかき集めて窪みに押し込みながら、彼はくるっと上手に反転させた。

(なるほど。最初はぐちゃぐちゃでも、ひっくり返したらきれいな丸になるのね)

見よう見まねでピックを使う。

簡単そうに見えたのに、絢乃がやるとうまくいかない。

たこ焼きが初心者だからというより、そもそも料理経験がほとんどなかった。

(きれいな丸にならないわ。もっと丁寧にやらないと)

「絢乃さん、そんなにゆっくりやってたら焦げるよ。適当でいいんだって」

適当にと言われたのは三度目だ。

それができる性分ではなく、ひとつひとつの形の調整にこだわってしまう。

「不格好なたこ焼きじゃ美味しそうに見えないわ」

「真面目なのは絢乃さんの長所だけど、家でのたこ焼きは手抜きでいいんだよ。売り物じゃないんだから」

昴は絢乃の三倍ほどの速さでひょいひょいと手早く大胆にひっくり返していく。

欠けていたり、餃子の羽根のような余計な部分がついていたりしても気にせず、焼き上がったものにソースをつけて早速頬張った。

「うまっ。十年ぶりくらいに作ったけど腕前は落ちてない。大学生の頃によく友達とたこ焼きパーティーしてたんだ。たこ以外にも色んな具材を入れて。チョコレートを入れた奴がいて、知らずに俺が食わされた」

「嫌がらせ?」

思わず同情して眉を寄せると、昴が笑う。

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