鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「遊びだよ。だけど意外とこれが美味しくて。それ以降、シメのデザートでチョコ入りを焼いてみんなで食べるようになったんだ」

男子学生が集まって誰かの自宅にいるところを思い浮かべた。

(楽しそうなのは想像できるけど、どんな話をするのかしら)

友人と呼べる人がほとんどいない絢乃でも、大学生の時は並んで講義を受けランチを一緒に取る同じ学部の女性がふたりいた。

けれどもお互いの家に行ったことはなく、飲み会もしない。

講義の間の空き時間に大学近くのカフェに行く程度の付き合いだった。

彼女たちとの話題はレポート課題やゼミの研究など、硬い話が多かったように思う。

卒業と同時に縁が切れたので、今は友人とは呼べない。

そんな自分とは違う社交性を昴に感じた。

きっと彼の学生時代はたくさんの友人に囲まれて賑やかだったことだろう。

(大勢の友達と集まった経験がないから、少し憧れる)

彼の方が彩りのある人生を歩んでいるような気がして羨ましくなった。

(今だけ、昴さんの真似をしてみようかしら)

ほとんど彼が焼いてくれたたこ焼きをふたりで食べ終え、二回目の生地をホットプレートに流し入れる。

今度は彼の真似をして適当に具材を入れ、形にこだわらずに手早くひっくり返した。

急に大雑把な焼き方になった絢乃に彼が驚いている。

「どうしたの?」

「あなたが言ったのよ。適当にって」

「へぇ。素直だな」

「売り物じゃないという説明に納得したからよ。私のこと、石頭だと思ってたの?」

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