鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
一番形がいびつなたこ焼きを皿に取り、ソースと鰹節、青のりをかけて頬張った。

「んっ、おいしいわ」

たこ焼きを食べた経験は十回もないが、すべて有名店のものだった。

その時の冷めていたものより、はるかに今の方が美味しい。

部分的に少し焦げているのも、具材のバランスが取れていなくて紅生姜が多すぎるのもいいアクセントになっている。

思わず片手で頬を押さえると、昴がフッと笑む。

「思ってないよ」

「なんのこと?」

「石頭だと思っていたのかと、君が聞いただろ」

「ああ、それね。融通が利かないだけじゃなくて、硬くて冷たいイメージを持たれるの。仕方ないと思ってるわ。違うとも言えないし」

社内では厳しい顔をしていないと舐められるので、そういうイメージを自ら作っている。

だから社員の陰口は仕方ないが、実家に住んでいた子供の時にも継母と妹から言われていたのでそういう性格でもあるのだろう。

絢乃が大学生だったある日の、妹と継母の会話を思い出してしまった。

『お姉ちゃんって笑ったことある? あ、それが笑顔なのか。硬くて冷たい石みたい』

『石に失礼よ。石の方がまだ可愛げがあるわ』

『ママ、それウケる。私、クラスの男子三人と付き合ってるのよ。お姉ちゃん、石女だから彼氏ができないんだよ』

折角のたこ焼きがまずくなりそうなので頭からふたりの姿を追い払い、もうひとつを口にした。

「批判には慣れてるから、正直に言ってくれていいわよ」

< 56 / 237 >

この作品をシェア

pagetop