鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
昴もそういう男性たちと同じで同居初日はフランス料理店に誘ったのに、今日はなぜたこ焼きが好きそうだと思ったのか。

「楽しいな」

「え、ええ」

「絢乃さん、ぼんやりしないで食べないと、俺に取られてなくなるよ。三回目は、たこ以外の食材も入れてみようか」

「まだ食べるの?」

「もちろん。学生の頃は取り合いだったな。朝まで焼き続けて、ひとり百個は食べた」

「すごいわね……」

男子学生の胃袋の大きさに驚いた。

絢乃と自分の皿にひょいひょいとたこ焼きを置いた彼は、鼻歌をうたいながら三回目を焼き始める。

先ほど『楽しいな』と言ったのは、本心のようだ。

絢乃はまだ戸惑いが残っているけれど、酔わせられないという不満はすっかり忘れていた。

(ビジネス婚の妻とのたこ焼きが楽しいなんて、昴さんっておかしな人ね)

親族顔合わせの日にもそう感じたが、打ち解けられる気がしなかったあの時よりは印象がよくなった。

「なに入れたい?」と聞かれたので、冷蔵庫に食材を探しに行く。

「チーズとベーコンがあるわ。お漬物もどうかしら?」

「いいね」

「あっ、昨日、取引先からいただいた生チョコもあるわ」

「入れよう。絶対にうまいから。俺を信じて」

食べてみたいという好奇心が膨らんだ。

学生時代に味わえなかった青春を体験させてもらっている気がして心が弾みだす。

(たこ焼きって楽しいのね)

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