鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「しんみりとした空気にしてごめんなさい。昔のことよ。気にしないで。まだ時間があるならコーヒー飲まない? コーヒーなら私が淹れてもしょっぱくならないわよ」

「お願いするよ」

彼の笑みが寂しそうに見えるのは気のせいか。

残したチャーハンの皿を持ってキッチンに立ち、ラップをかけて冷蔵庫にしまった。

それからコーヒーマシンの電源を入れる。

『私が淹れても』と言ったが、コーヒー粉のカプセルをセットしてカップを置くだけだ。

しばらくするとコーヒーが抽出される音がして、いい香りが広がった。

「昴さん、シュガーとミルクは?」

「いつもブラックで飲んでる。絢乃さんは?」

「私?」

コーヒーを出そうとしているのは絢乃なのに、なぜ聞かれたのかと不思議に思う。

ダイニングテーブルを見ると、朝日の差し込む窓をバックに彼がまっすぐな視線をぶつけてきた。

思わず鼓動が跳ねる。

「君の好みも知りたいんだ。少しずつ、お互いを知る努力をしないか? 夫婦なんだから」

(知っても意味がないのに……)

子供ができたら別れるつもりだが、その計画は話せない。

気乗りはしないけれどコーヒーの好みくらいならいいと思い、食器棚の引き出しを開けながら答える。

「家ではシュガーをひとつだけ。仕事中はふたつだったり、三つだったり多めにしているわ」

「覚えておくよ。絢乃さん――」

言葉を切った彼が、なにかを考えているような顔をした。

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