鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
二杯目のドリップを始めながら、「遠慮はいらないわよ」と続きを促す。

「時間が合う時は、一緒にテーブルに向かわないか? コーヒーだけでもいいから」

断られるかもしれないと思っているのか、彼の眉尻が下がっていた。

「お互いを知るために?」

「そうだけど、単純に君ともっと一緒にいたいからだよ」

好意があるような言い方をされて驚いた。

抱かないと言われた同居初日よりも印象がよくなっているのだろうか。

(料理がまったくできないのを知られて、かえってマイナスだと思うのに)

「ひとりよりふたりの方が楽しいだろ。昨日のたこ焼きも今朝のチャーハンも」

(ああ、そうか。賑やかなのが好きなだけなのね)

「君はどう思う?」

そうしたからといって子供ができるわけじゃないが、頷いた。

彼との食事で費やす時間を無駄だと感じなかったからだ。

「私に料理を教えてくれない? ここまでできないとさすがに恥ずかしいわ」

「いいよ。最初のレッスンはなにを作ろうか?」

「そうね、おみそ汁がいいわ。小学生の時に家庭科の授業で作った経験しかないの。たぶん、あなたが思うよりもなにも作れない」

「正直だな」と昴が肩を揺らした。

戦闘用のパンプスを履いていないせいなのか、家の中で自分を大きく見せたい気持ちにならない。

ふたり分のコーヒーをトレーにのせて、彼のもとに戻った。

「どうぞ」

「ありがとう。いい香りだ」

向かい合って座り、絢乃もシュガーを入れたコーヒーを口にする。

< 66 / 237 >

この作品をシェア

pagetop