鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
父と絢乃と昴の三人でレストランで食事をし、お互いに結婚の意志があるのを確認した。

他に話したのは、株価や為替、今後取り入れたい海外の不動産売買のシステムについてだ。

お見合いのような雰囲気があったのは始めの五分ほどで、あとは仕事関係者との座談会のようだった。

昴に抱いた印象は頭の回転が速く、話し上手で相手の懐に潜り込むのがうまい実業家。

気難しいところのある絢乃の父が、彼のおだてに乗せられて上機嫌でワインを何杯もあおっていたので感心した。

夫としてどうなのかはよくわからなかったが、そこに興味はない。

ビジネス婚なのだから。

この結婚が決まった理由はもうひとつあり、それは――。

しばし無言になると、当たり障りのない話題を振られる。

「食事はどうでした?」

「美味しかったです。太刀魚のお造りが特に。久しぶりに食べました」

「歯ごたえを感じるほど鮮度のいい太刀魚でしたね。柚子の香りが爽やかで鱧の椀もよかった」

「ええ、本当に。お出汁も美味しかったですよね」

気が合っていそうな会話が続いていたのに、ふと彼が黙った。

「ひとつ、聞いていいですか?」

「どうぞご遠慮なく」

「ありがとう。絢乃さんは、私がビジネス相手でなくてもこの結婚を承諾しましたか?」

「え、ええ」

「なぜ?」

ビジネス以外にも結婚を決めた理由がある。

それは彼もわかっているはずなのにと戸惑った。

父親同士が長年の親友で、絢乃と昴の結婚は子供の頃に決められていた。

< 7 / 237 >

この作品をシェア

pagetop