鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
(次は肉じゃがを作ろうと言ってくれたけど、いつになるかわからないわね)
帰宅時間が合う日の方が少ないのはわかっている。
それなのに残念に思い、その気持ちに疑問を持った。
(いずれは別れるつもりなのに、一緒に過ごしたいと思うなんておかしいわ)
今日はやけに自分らしくない考え方をしてしまう。
新人秘書のミスを優しくフォローしただけでなく、問題だらけの稟議書を否決するのも胸が痛んだ。
一生懸命に考えて作成したのだろうと思い遣ってしまったからだ。
甘い心で厳しい顔をするのは精神的にきつく、心が癒しを求めていた。
通勤バッグの中からうさぎのマスコット人形を取り出して話しかける。
「私は影響されやすい人間だったみたい。昴さんならどうするか考えていたせいで、今日は完全な鉄でいられなかったわ。余計な悩みが増えた気分よ」
(ふーん。それじゃ影響されないように、なるべく顔を合せないようにして暮らしたら?)
「一緒に料理して食べるのは楽しいわ」
(離婚するのに? 変なの)
「そうよね。どうしてかしら……」
親友もわからないのか、手のひらで黙ったままだ。
しばらく見つめ合ってから、やっと話しかけてくる。
(疲れてるのよ。そういう時に考えてもいい答えはでないわ。せっかく早く帰れるんだからリラックスして。あそこに寄って行ったら?)
「そうね、そうするわ。うさちゃん、ありがとう」
寄り道を決めると、心がいくらか軽くなる。