鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
私用の携帯で電話をかけた先は、三条という名の亡き母の実家だ。

祖母と伯父夫婦、その息子の和志が住んでいる。

五回コールで伯母が電話に出てくれた。

「絢乃です。仕事が早めに終わって、急で申し訳ないけどこれから少し寄ってもいい?」

『もちろんよ。絢乃ちゃんは家族なんだから、いちいち聞かなくてもいいのよ。いつでも帰っておいで。お夕飯、一緒に食べようね』

「ありがとう」

嬉しい言葉をもらえて疲れた心身に活力が戻る。

到着予想時刻を伝えて電話を切り、すぐに社長室を出た。

生まれ育った実家より身近に感じ、家族という気がするのも三条家の人たちの方だ。

母の月命日にはできるだけ訪問し、それ以外でも癒されたくて度々足を運んでいた。

(そういえば、昴さんはお兄ちゃんと同じ歳だ)

従兄の和志を子供の頃から〝お兄ちゃん〟と呼んでいる。

和志はお調子者だけど本当の兄のように絢乃を気遣ってくれる、心の温かい人だ。

共通点を見つけると昴にも少しだけ親近感を覚えた。

会社からタクシーに乗り、途中で手土産を買って三条家の門前に着いた。

お寺にあるような古く大きな和風の門は、明治時代に造られたものらしい。

広い敷地に建つ平屋の立派なお屋敷は百年ほどの歴史があると聞いている。

三条家はその昔、子爵の爵位を持っていた華族なのだが、代々お人好しな人柄で商才に乏しく、呉服屋の家業をたたんで以降は大きな屋敷以外は庶民らしい暮らしぶりだ。

石畳を踏んで明かりの灯る引き戸の前に立った。

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