鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「あらそう? それじゃついでに冷蔵庫からお新香を出して。お肉料理の時はサッパリしたものも欲しいから。いつもの蓋つきの入れものよ」

ここに来ると、たいてい夕食までご馳走になる。

いつもは五人で囲む食卓にひとり、いやお腹の子を含めてふたり増えると、ますます賑やかな気がして嬉しい。

絢乃の定位置は祖母と伯母の間だ。

食に興味がない絢乃でも、三条家の食事だけはいつも美味しく感じていた。

あたたかい家族の雰囲気がそう思わせてくれるのかもしれない。

「絢乃ちゃん、今日はお休みなの?」

左隣の祖母に聞かれて、会社帰りだと答えると同情された。

「大きな会社だからお茶を出すのも大変でしょ。絢乃ちゃんはえらいわ」

祖母は介護が必要な段階ではないが認知機能に衰えがみられるので、絢乃が社長なのをすぐに忘れてしまう。

昔の感覚で、若い女性社員が男性社員にお茶を出していると思っているのも訂正できない。

勘違いされても祖母が相手だと少しも不快に思わず、むしろ心配してくれる気持ちが嬉しい。

「大丈夫よ、おばあちゃん」

否定せずに流そうとしたが、伯父が祖母にではなく美沙に説明する。

「絢乃ちゃんは大企業の社長を務めているんだよ。我が家で一番の出世頭で頑張り屋。自慢の娘なんだよ」

実父が絶対に言わない褒め言葉を、伯父は惜しみなくかけてくれる。

照れ笑いしながらお礼を言うと、今度は伯母に褒められる。

< 79 / 237 >

この作品をシェア

pagetop