鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
ビジネス婚という言葉を使わなかったのは、三条家の優しい家族に心配をかけたくないからだ。

「絢乃は可愛げないからな。いくらあいつでも、手懐けるのに時間がかかるだろうとは思ってる」

「私に可愛げを求められても困るわ。手懐けるっていう言い方も――あいつ? お兄ちゃん、昴さんと知り合いなの?」

結婚を決めた昨年の秋に昴の話はした。

その時の和志は驚いてはいたけれど、知人だとは言わなかった。

かいがいしく美沙の取り皿に野菜や肉を入れながら、和志がニヤッとする。

「中高が同じ。クラスは別だったけど」

「どうして隠してたの?」

「名前を聞いた時にはピンとこなかったんだよ。あとから気づいて卒業アルバムを引っ張り出した。その程度だよ」

(友人じゃないということね。話したこともないのかも)

それなら昴の方もきっと覚えていないだろう。

「で、あいつとはどんな話をしてるんだ?」

「普通よ。仕事の話はしないわ。まだお互いを知ろうとしている段階だから、緊張する」

「自分をよく見せようとするからだろ。うちにいる時みたいに、気を抜いてごろごろしてろよ」

「ここでも、ごろごろしたことないわよ」

和志の適当なアドバイスに呆れていると、祖母が和志にとんちんかんな注意をする。

「心配しなくてもころころと玉のような可愛い子供ができるから、催促しちゃダメよ。和志、あなたこそ早くお嫁さんを連れていらっしゃい」

「ばあちゃん、今連れてきてるんだけど。お腹の子供付きで」

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