鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「あら、そうなの? まぁ、おめでとう」

認知機能のせいだけではなく、祖母は昔から可愛らしい勘違いが多かった。

絢乃は笑わせてくれる祖母が大好きだ。

(鉄仮面を被らなくていい唯一の場所かも)

みんなが笑っている中で、美沙だけが浮かない顔をしているのに気づいた。

家族のノリについていけずに置き去りにされていると察して、慌てて話題を振る。

「美沙さん、結婚式は考えているんですか?」

それに答えたのは和志だ。

「写真だけ撮る予定。今から計画して招待状を送ってとなると挙式する頃には腹がでかくなってるだろうし、美沙が大変だから」

「美沙さんに聞いたのよ。お兄ちゃんが答えを取らないで」

「緊張してるから代わりに答えたんだろ。大事な妻を思い遣らないとな。絢乃も夫を大事にしろよ。ちゃんと相手の目を見て話してるか?」

(せっかく美沙さんが話に入れるようにしたのに。全然わかってないわね)

和志の夫ぶりを心配したが、美沙が目を細めて隣を見ていたのでふたりはこれでいいのかもしれないと思い直した。



自宅に着いたのは二十二時頃だ。

食事のあとすぐに帰ろうとしたのだが、引き留められた。

年の近い絢乃がいた方が美沙も気が楽だろうという、三条家のみんなの配慮だ。

(私がいても、美沙さん浮かない顔をしてたけど……)

ネグリジェの上にガウンを羽織った絢乃は、無人のリビングに入った。

遅くなると聞いているので、昴がまだ帰宅していないことは気にならない。

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