鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
入浴中も髪を乾かしている時も頭から離れなかったのは、美沙の顔だ。

(緊張していただけ? つわりはないような話だったけど、途中で具合が悪くなった?)

横になったらどうかと伯母が何度か声をかけていたが、大丈夫だと言って断っていた。

美沙の取り皿に和志がどんどんすき焼きをよそうから、一番食べていたようにも思う。

体調不良なら、さすがに断るだろう。

ソファに座った絢乃は、タブレットを膝に置いた。

日課の経済ニュースを読もうとしたが、美沙の顔がチラついて内容が頭に入らない。

(今夜はダメね。明日の朝にするわ)

諦めて自室にタブレットを片づけにいき、代わりにうさぎのマスコット人形を手にリビングに戻った。

就寝時間だが心がモヤモヤして、このままでは眠れそうにない。

電子レンジでホットミルクを作り、マグカップを手にダイニングテーブルの椅子に座った。

親友と話すのは今日、二度目だ。

(絢乃ちゃん、元気ないわね。どうしたの?)

「美沙さんが気になって……」

(楽しくなさそうだったのが、自分のせいだと思ってるの?)

「ええ。なんとなくだけど」

美沙に話を振っても、すぐに絢乃の話題に戻されてしまう。

三条家の家族は大らかでお人好しなほど優しいが、人の機微に疎いところがある。

美沙が浮かない顔をしていたのにも気づいていないだろう。

「話題の中心が私なのが、嫌だったんじゃないかと思ったの。やっぱり、もっと早く帰ればよかったわ」

(引き留められたんでしょ?)

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