鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
『絢乃ちゃんもゆっくりしていって。美沙さんもその方が嬉しいわよね?』

そんなふうに伯母に言われると美沙は頷くしかないだろうし、絢乃も断りにくかった。

後悔していると親友が疑問を投げかける。

(話題の中心が自分じゃないからって、子供みたいに拗ねるもの?)

「そうよね。私より若いけど大人なんだから、違うわよね」

二十五歳だと聞いた。

ファッション系の専門学校を卒業後、都内のショッピングモールで正社員として勤めているそうだ。

(それじゃ単純に、苦手なタイプだったんじゃない?)

「はっきり言わないでよ。でもそうかもしれない。怖いイメージを持たれてしまったのかも」

大企業の社長という肩書のせいで、壁を作られてしまったのだろうか。

来月から三条家で暮らすと言っていたのに、美沙に嫌われると行きにくくなる。

絢乃にとってあの家は真の実家のようなもので、心休まる唯一の居場所を失いたくないと思った。

「今からイメージを変えられるかしら」

(どこが悪いのかわかっているなら改善の余地はあるわね)

「社長は辞められないわよ。他でリカバリーしたいけど、どこをどうしたらいいのか……」

黙ってしまった親友の代わりに、真後ろから声がした。

「誰と話してるの?」

「きゃっ! 昴さん」

壁掛け時計は二十三時四十分をさしている。

取引先との会食で帰宅は日付が変わってからと聞いていたので、まだ数十分先だと思っていた。

「おかえりなさい。物音がしなかったから驚いたわ」

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