鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「ごめん。絢乃さんが寝ているかもしれないと思って音を立てないように気をつけたんだ」

うさぎのマスコット人形を両手で包むようにして隠したが、遅かった。

「それなに?」

ワイシャツ姿でネクタイを緩めている昴が、視線を絢乃の手に向けていた。

(バカにされそうだけど……)

諦めて手の中のものを見せた。

恥ずかしくて目を合わせられない。

「子供の頃に母が作ってくれたマスコット人形よ」

「へぇ。大切にしているんだね」

「え、ええ」

昴が向かいの席に座った。

笑われるかと思って身構える。

「いつも話しかけてるの?」

「子供の頃はそうだったけど、今はたまに」

チラッと彼を見ると普通の表情で、バカにしている雰囲気は感じなかった。

「この子に話しかけると、自分の気持ちや状況を整理できるの。だから今も相談してたのよ。自問自答なのはわかってるけど」

「そう」

お互いの反応を待っているような間が空いて、逸らした視線を戻した。

「笑わないの?」

「どうして?」

「どうしてって、三十にもなってこんなマスコットに……」

「そういう言い方はよくないんじゃないか。今まで君を支えてくれた友達なんだろ?」

昴の指摘が胸に刺さる。

(バカにしたのは私?)

「うさちゃん、ごめんなさい。あなたはかけがえのない親友よ」

親友はムッとした顔をしていたけれど、心から謝ると許してくれた。

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