鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
(わかってるわよ。恥ずかしかっただけでしょ? でも二度と『こんなマスコット』なんて言わないで)

「うん。ありがとう。昴さんも」

「お礼はいらないけど、その代わりに親友に相談していた話を俺にも聞かせてくれないか?」

まったく頭にないことを言われたので目を瞬かせた。

(ビジネスの話ならともかく、三条家の相談を昴さんにするの?)

「仕事上の機密なら話さなくていい」

「違うわ。プライベートの問題で、昴さんには少しも関係ない話なのよ?」

「それでも聞きたい」

テーブル上で指を組み合わせた彼に、真摯な目を向けられた。

真剣に聞く姿勢を取られては断りにくい。

(別に話せない内容ではないわ。第三者だからわかることもあるかもしれないわよね)

そう自分に言い訳して数時間前の出来事を口にする。

「母の実家は三条という家で、仏壇に位牌を置かせてもらってるの。前に月命日にお参りに行ってる話をしたわよね?」

「ああ」

「今日は月命日じゃないけど、仕事が早く終わったから寄ってみたの。そうしたら――」

従兄が結婚予定で妊娠中の恋人を、家族に紹介する大事な日だと知らずに訪問してしまった。

遠慮しようとしたが引き留められて一緒に食卓を囲んだ話をした。

「従兄は和志というの。昴さんと同じ歳よ」

中学と高校が同じだが、友人関係ではないような口ぶりだった。

名前を出してみたけれど頷いただけで昴に驚きはなく、やはり覚えていないようだ。

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