鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
美沙は来月からあの家で同居予定なので、嫌いだから来ないでとはっきり言われるのを恐れた。

不安になって手の中の親友に視線を落とす。

「一緒に行こうか? 君のお母さんの御位牌を拝ませてもらいたいと思っていたんだ。三条家のみなさんにもご挨拶したい」

折角の申し出だが、ビジネス婚の夫にそこまでしてもらいたくない。

絢乃が心の拠り所とする三条家の問題には関わってほしくない気持ちだ。

「お気持ちだけいただくわ。ありがとう」

笑みを作って断ると、彼の眉尻が寂しげに下がった。

(残念そうね。私に頼られたかったの? どうして?)

彼の心は読めないが、気を悪くしないように言い訳を足す。

「一緒に来てくれたら心強いとは思うのよ。でも美沙さんが、ふたりがかりで責められている気分になるんじゃないかしら。本音を話してくれないと思うの。挨拶は別の機会にお願いするわ」

「たしかにそうだな」

「そのうち、私ひとりで美沙さんに会いに行ってくるわ」

親友とふたりで相談していても、この結論に達しなかったことだろう。

「もう来ないでと言われそうで怖いけど、わだかまりを残しておけない。従兄と結婚してくれる美沙さんにも、嫌な思いをしてほしくないから。昴さん、背中を押してくれてありがとう」

「役立てたならよかった。結果も教えてくれないか?」

もし三条家に通えなくなったら、慰めてくれるのだろうか。

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