鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
好意がないと口にしない方がスムーズに結婚生活に入れると思うのだが、彼は違うのだろうか。

(それとも、私からの本気の愛の告白を期待していた?)

大企業の経営者で容姿端麗の彼だから、きっと今まであまたの女性の心を簡単に手に入れてきたのだろう。

絢乃も出会ってすぐに落とせる自信があったのかもしれない。

残念そうな表情なのは、彼の恋愛戦歴に傷がついたという意味なのか。

(申し訳ないけど、私があなたに惚れることはないわ。さっきまでのように適当に話を合わせてくれたらよかったのに、面倒くさいことを言うのね)

不愉快さを隠して笑みを強めた。

「昴さんのお気持ちも伺っていいでしょうか? 私も不思議に思っていたんです。昴さんは私よりも自由な返事ができそうに思いますので」

絢乃は父に逆らえないが、昴の父は亡き人なので断ることもできたはずだ。

ビジネスでのメリットがあっても、それだけで結婚を決められるものなのか疑問に思う。

恋人はどうしたのだろうと、ふと思った。

彼ほどの人なら、交際相手がいない方がおかしい気がした。

(私との縁談を持ちかけられた時に別れたの? それとも愛人契約に切り替えた?)

勝手な憶測だが、父と重ねて見てしまいさらに心が冷えた。

一瞬、真顔になり、すぐに気づいて微笑みかけたが彼は見逃さなかったようだ。

「無理して笑顔でいてくれなくてもいいですよ。自然体でいてください」

「そう言われましても、これがいつもの私ですので」

社内で笑うことはほとんどない。
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