鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「さっき完成したんだけど、見ての通りよ。下手でごめんなさい」

「手作りの風合いがあって、すごくいい。ありがとう」

気を使わせてしまったのが余計に恥ずかしい。

エプロンを着られずにいると、昴がドアの方へ爪先を向けた。

「どこにつけようか。そうだ、通勤鞄の持ち手にしよう」

(えっ!?)

恥ずかしがっている場合ではなくなり、慌てて彼の腕を掴んだ。

「待って。人に見られるような場所はダメよ」

「なぜ? 妻が作ってくれたと会社で自慢したい」

下手なので自慢にはならないし、それ以前に社長が手作りのマスコット人形を鞄にぶら下げるのはどうなのか。

威厳もなにもあったものではない。

「自慢したいと言ってくれるのは嬉しいわ。でも私が恥ずかしいの。今度はもう少し上手に作るから、納得するものができるまで人に見せないで」

残念そうな顔をされたが、「わかったよ」と絢乃の意見を聞いてくれた。

ホッとしたのは束の間で、鼓動が跳ねる。

「これも十分可愛いのに」

昴の唇がマスコット人形に触れた。

自分がキスされたわけじゃないのに顔が熱くなり、壁掛け時計の方へ視線を逸らした。

「もう十五時なの? 急がないと」

これから三条家に行く予定で伯母に連絡してある。

母の月命日は明日だが月曜は忙しくて行けないと思うので、今日仏壇を拝ませてもらおうと思っていた。

それだけならいつものことだが、今日は美沙と話し合いたいと思っているので緊張する。

美沙はもう三条家で暮らしているそうだ。

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