鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
伯母と廊下で話していると、奥の部屋のドアが開いて美沙が顔を覗かせた。

まだマタニティ服は必要ないようで、普通のカジュアルな服装だ。

「起きてます」

こっちに向かってくる美沙に緊張した。

「絢乃さん、こんにちは」

ぎこちない気はするが、微笑みかけてくれたので少し気を緩める。

嫌われたのではないかという心配は取り越し苦労だったのではないかと期待した。

「こんにちは、美沙さん。私のことは気にせず、お部屋で休んでいてください」

妊娠中の彼女を気遣ったつもりだったが、スッと笑みが消えた。

「私がいるとお邪魔ですか?」

「そんなつもりで言ったんじゃないの。もちろん美沙さんともお話したいわ。先にお仏壇を拝ませてもらうから、あとで声をかけようと思ったのよ」

「そうですか。余計なことを聞いてすみません。では私は、お茶の用意をしますね」

美沙の顔に笑みが戻ったが、作りもののような気がしてならない。

(理由はわからないけど、嫌われているのは間違いないみたい……)

背中に冷や汗を流す絢乃とは違い、伯母はいつも通りのん気だ。

「美沙さん、花瓶を出してもらえる? 絢乃ちゃんが持ってきてくれたお花を、仏壇に供えてちょうだい」

「花瓶? どこにあるんですか?」

一緒に暮らし始めたばかりでは探すのが大変だろう。

小間使いにしてはいけないと、焦って口を挟む。

「花瓶は自分で出すわ。お客様じゃないから、私のことは気にしないで」

止められないうちにと足早に廊下を進む。

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