イケメンIT社長に求婚されました ―からだ目当て?……なのに、溺愛が止まりません!―
その記事は、思った以上に大きな反響を呼んだ。

《「理想の彼氏」は誰かの孤独から生まれた》
《AIがくれた、もうひとつの救い方》
《Velvet開発者・葉山律が語る、言葉と寄り添いの正体》

 

SNSには記事のスクリーンショットが並び、
「泣いた」「こんな開発者がいるなら信じられる」
「アプリ消しちゃったけど、また入れ直す」──
そんなコメントが次々と投稿されていた。

Velvetのダウンロード数は、
記事公開の翌日には再び伸びはじめ、
ランキング上位にふたたび浮上した。

社内にも、久しぶりに希望の空気が戻っていた。

 

「うれしいな……」
PC画面を見つめながら、私はひとり呟く。

だけどそれは、ただの他人事じゃなかった。

 

(この人の隣にいるって、こういうことなんだ)

社長の発信は、もう社内だけのものじゃない。
その言葉が、思いが、社会の目にさらされている。

批判も、称賛も。
ぜんぶひっくるめて、彼はそれを受け止める立場にある。

──じゃあ、私は。


「わたしは、このままでいいのかな」

声に出すと、胸の奥が小さく疼いた。

派遣社員としてスタートし、
正社員になり、
こうしてまた社長の隣に戻ってきた。

でも──その歩みは、
「この人に守られてきた」だけだった気がする。

 

次に目を向けたのは、自分のPCのブックマーク。

「中途採用」「ITスキル基礎講座」「プロジェクトリーダー育成」

以前、落ち込んでいた時期に何気なく開いたページの数々。

今まで、何度も見ては閉じたそれらが、
今日はやけに胸に引っかかった。

 

(今度は、私から変わらなくちゃ)

守られるばかりじゃなく、
支えてばかりでもなく、
「この人と並んでいく」ために。

私自身が、自分の力で進まなきゃいけない。

 

「やっぱり……受けてみようかな。試験」

ふと漏れたその言葉が、
自分の心を一歩だけ前に押してくれた気がした。

 

その夜。

社長と帰宅中のエレベーターで、私はぽつりと切り出した。

「わたし、もう少しがんばってみようと思ってます」

「……うん?」

「技術のこと、ちゃんと学び直してみようかなって。
プロジェクトにも、もっと深く関われるように」

「それって……誰かに言われたの?」

「いえ、勝手に決めました。
でも、あなたの隣にいるから──そう思えたんです」

 

社長は驚いたように一瞬黙っていたけれど、
次の瞬間には、目を細めて優しく笑った。

「……うれしいよ、陽菜」

そして、頭をそっと撫でてくれた。

「君なら、きっとなんでもできる。
でも無理はするな。……俺が支えるから」

 

支えられることが、
こんなにもやさしいものだと教えてくれたのは、
やっぱりこの人だった。

だけど今度は──
私自身が、この人の未来を支えられる人になりたい。

その想いだけが、胸の奥でまっすぐに灯っていた。
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