イケメンIT社長に求婚されました ―からだ目当て?……なのに、溺愛が止まりません!―
──その日、駅の広告パネルに貼られた雑誌のポスターを、私は偶然、目にした。
スーツ姿の男性と、ブロンドヘアの美しい女性。
二人ともカメラ目線で微笑んでいて、その中央には大きくこう書かれていた。
《感情に寄り添うAI、「Velvet」の革新。
時代を変えるCEOと、副社長エリザベス・ウィンザーの挑戦》
そこに映っていたのは、社長──葉山律と、エリザベスだった。
一瞬、足が止まった。
目を逸らしたいのに、視線が離せなかった。
女性の完璧な笑顔と、自然に並ぶ肩の高さ。
揃いのシルバートーンのスーツが、二人の距離をより一層近く見せた。
まるで、理想的なパートナーのようだった。
帰宅後、胸のざわつきを抱えたまま、私はついに彼女のSNSを検索してしまった。
──「Elizabeth Windsor」
検索窓に打ち込む手が震えていた。
彼女のプロフィール写真は、爽やかな屋外で笑顔を見せるショット。
その背景には──ハーバード大学の校舎。
フォローリストには著名人の名が並び、
投稿された写真のひとつに、私の心が凍りついた。
【#Throwback】
──"Harvard days were the best.律と毎日言い合ってた頃が懐かしい(笑)"
そこには、学生時代と思われるエリザベスと社長の写真。
社内カフェのような場所で向かい合い、笑い合っている。
机の上にはノートパソコンと書類、コーヒーカップ。
他愛ない一枚。けれど、それがあまりにも自然な距離感だった。
二人は同じ大学、同じ言語、同じ世界で生きてきた。
──私は、そのどれにも属していない。
彼と並んで笑った記憶も、
支社を切り盛りする能力も、
かつての思い出を共有する過去も──私には、ない。
スマートフォンを手にしたまま、ソファに沈み込む。
涙が出るほど悔しいわけじゃない。
でも、どうしようもなく、心が重かった。
(私じゃ、だめかもしれない)
そんな思いが、じわじわと染み込んでくる。
彼が私を好きだと言ってくれたことは、
嘘じゃないとわかってる。
でも──彼がそばにいて「安心する」のは、
エリザベスさんのような人なのかもしれない。
学歴も、能力も、語学力も。
わたしには、何もない。
ただ好きでいるだけじゃ、この人のとなりに立つには足りない。
*
その日の夜、仕事帰りの駅前で、知らない男性に声をかけられた。
「ねえ、ちょっとだけでいいからさ。連絡先だけでも──」
「すみません」と断ると、男の表情が一変した。
「なんだよ、エロい身体してるくせに、ノリ悪いな」
一瞬、胸が凍りついた。
何も言えず、足早にその場を離れる。
足音がやけに大きく響いて、うつむいた視界に、胸元のふくらみが映り込んだ。
(……やっぱり、これしか見られてないんだ)
わたしにあるのは、この胸だけ。
誰かに優しくされたり、求められたりしても──
それは「わたし」じゃなく、身体の一部なんじゃないかって、
心の奥に棘のような疑いが、またひとつ刺さる。
彼はそんな人じゃないのに、ときどき、昔のことを思い出して不安になってしまう。
そう思った瞬間、スマホに通知が届いた。
《律: 今日、こっちは朝だった。会議が続いてるけど、君のこと考えてたよ》
ほんの短い一文。
それなのに、そのメッセージを見ただけで、
また胸がぎゅっと締めつけられた。
(あなたが思っている私は、本当の私とは違うかもしれない)
完璧に応えられるわけじゃない。
甘えてばかりで、努力も中途半端で。
たぶん、エリザベスさんのほうが、ずっとあなたの「理想」に近い。
だけどそれでも──
あなたを好きになったこの気持ちだけは、嘘じゃない。
それだけは、信じていたかった。
スーツ姿の男性と、ブロンドヘアの美しい女性。
二人ともカメラ目線で微笑んでいて、その中央には大きくこう書かれていた。
《感情に寄り添うAI、「Velvet」の革新。
時代を変えるCEOと、副社長エリザベス・ウィンザーの挑戦》
そこに映っていたのは、社長──葉山律と、エリザベスだった。
一瞬、足が止まった。
目を逸らしたいのに、視線が離せなかった。
女性の完璧な笑顔と、自然に並ぶ肩の高さ。
揃いのシルバートーンのスーツが、二人の距離をより一層近く見せた。
まるで、理想的なパートナーのようだった。
帰宅後、胸のざわつきを抱えたまま、私はついに彼女のSNSを検索してしまった。
──「Elizabeth Windsor」
検索窓に打ち込む手が震えていた。
彼女のプロフィール写真は、爽やかな屋外で笑顔を見せるショット。
その背景には──ハーバード大学の校舎。
フォローリストには著名人の名が並び、
投稿された写真のひとつに、私の心が凍りついた。
【#Throwback】
──"Harvard days were the best.律と毎日言い合ってた頃が懐かしい(笑)"
そこには、学生時代と思われるエリザベスと社長の写真。
社内カフェのような場所で向かい合い、笑い合っている。
机の上にはノートパソコンと書類、コーヒーカップ。
他愛ない一枚。けれど、それがあまりにも自然な距離感だった。
二人は同じ大学、同じ言語、同じ世界で生きてきた。
──私は、そのどれにも属していない。
彼と並んで笑った記憶も、
支社を切り盛りする能力も、
かつての思い出を共有する過去も──私には、ない。
スマートフォンを手にしたまま、ソファに沈み込む。
涙が出るほど悔しいわけじゃない。
でも、どうしようもなく、心が重かった。
(私じゃ、だめかもしれない)
そんな思いが、じわじわと染み込んでくる。
彼が私を好きだと言ってくれたことは、
嘘じゃないとわかってる。
でも──彼がそばにいて「安心する」のは、
エリザベスさんのような人なのかもしれない。
学歴も、能力も、語学力も。
わたしには、何もない。
ただ好きでいるだけじゃ、この人のとなりに立つには足りない。
*
その日の夜、仕事帰りの駅前で、知らない男性に声をかけられた。
「ねえ、ちょっとだけでいいからさ。連絡先だけでも──」
「すみません」と断ると、男の表情が一変した。
「なんだよ、エロい身体してるくせに、ノリ悪いな」
一瞬、胸が凍りついた。
何も言えず、足早にその場を離れる。
足音がやけに大きく響いて、うつむいた視界に、胸元のふくらみが映り込んだ。
(……やっぱり、これしか見られてないんだ)
わたしにあるのは、この胸だけ。
誰かに優しくされたり、求められたりしても──
それは「わたし」じゃなく、身体の一部なんじゃないかって、
心の奥に棘のような疑いが、またひとつ刺さる。
彼はそんな人じゃないのに、ときどき、昔のことを思い出して不安になってしまう。
そう思った瞬間、スマホに通知が届いた。
《律: 今日、こっちは朝だった。会議が続いてるけど、君のこと考えてたよ》
ほんの短い一文。
それなのに、そのメッセージを見ただけで、
また胸がぎゅっと締めつけられた。
(あなたが思っている私は、本当の私とは違うかもしれない)
完璧に応えられるわけじゃない。
甘えてばかりで、努力も中途半端で。
たぶん、エリザベスさんのほうが、ずっとあなたの「理想」に近い。
だけどそれでも──
あなたを好きになったこの気持ちだけは、嘘じゃない。
それだけは、信じていたかった。