イケメンIT社長に求婚されました ―からだ目当て?……なのに、溺愛が止まりません!―

第11話 あなたは理想を超えた彼氏

スーツケースの音。
アナウンスの声。
キャリーを引く人々が、行き交う国際線ロビー。

そのざわめきの中、私は一点を見つめて立っていた。

──出入口ゲート。
「到着便」の文字の下に、
「ロサンゼルス国際空港」の便名が点灯する。

手が、少しだけ汗ばんでいた。
でも、震えてはいない。

胸の奥の鼓動は速かったけれど、
それはもう不安からじゃない。

(私は、変わった)

もう、彼の隣に立つのが怖くない。

大きな人波の中に、見慣れたシルエットが現れた瞬間、
私はすっと背筋を伸ばした。

 

茶色い瞳。くせのない栗色の髪。
長い脚でまっすぐ歩いてくる姿は、どこまでも見慣れていて、
でも、今の私は、彼をただ待つ人ではなかった。

「社長──じゃなかった。律さん」

彼が私に気づいて、目を細めた。
数歩、そして一気に駆け寄ってくる。

「陽菜……!」

「おかえりなさい」

自然と笑顔になれた。
そして、胸を張って言った。

「Velvetの商談、成立しました」

彼は一瞬、目を見開いて、
それからふっと笑った。

「……やっぱり君は、すごいな」

「そうかな。でも、ちゃんと努力しました」

「うん、知ってる。俺の知らないところで、君はずっと頑張ってたんだな」

彼がそっと手を伸ばして、私の頬に触れる。

「それを、誇りに思うよ。君がいてくれて、本当に良かった」

「……わたしも。律さんがいてくれたから、ここまで来られたんです」

私たちはそのまま、自然と抱き合った。

泣きたい気持ちが、なかったわけじゃない。
でも、いまの私はもう、涙に頼らない。

強くなった私で、彼の胸に飛び込む。

「ありがとう。帰ってきてくれて」

「いや、ありがとうはこっちだ」

彼の声が耳元に落ちる。

「君が、ここにいてくれることが……一番、うれしいよ」

その言葉に、胸の奥がじんとあたたかくなった。
 

「……おかえりなさい」

ようやく言えた言葉に、彼がふっと笑う。

「ただいま」

 

たった二言。
でもそれは、何よりも深い約束のようだった。
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