酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
奈緒は、少し落ち着きを取り戻したように、温かいほうじ茶に両手を添えたまま口を開いた。

「来月あたりから、テレビ局とうちの新聞社の合同取材が入ると思うんですけど……」

川合が思い出したように声を上げる。
「あー、なんか言ってたね。『TOKYOリアルタイム』のやつでしょ。もしかして、水原さん来るの?」

奈緒は、ほんの一瞬だけ胸を押さえて、かすかに首を横に振った。

「いえ……私も立候補したんですけど、プレゼンで負けてしまって。別の方が来ます」

「そうなんだ」
川合は少し残念そうに言った。

奈緒の表情がわずかに陰るのを、瀬戸は見逃さなかった。

彼は少しだけ前に身を乗り出して、静かに言葉をかける。

「水原さんには、水原さんにしかできないこと、ありますよね」

その一言が、胸の奥の何かをそっと叩いた。
止まっていたはずの涙が、再び奈緒の目にじんわりと浮かび上がる。

両目が潤み、視界がにじんでいく。

その様子を見て、川合が小声でツッコミを入れる。
「ちょっと瀬戸、泣かすなよ」

瀬戸は苦笑して、肩をすくめた。
「いや、泣かすつもりじゃなかったんですけど……」

交番の静かな空気の中で、温かいほうじ茶の湯気がふわりと立ち上る。

それが、ほんの少しだけ奈緒の張り詰めた心を和らげていた。
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