酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
数日間、仕事を休ませてもらった。

薬を飲んで、ひたすら眠り、食欲は戻らなくても、熱はようやく落ち着いてきた。

頭痛もほとんど引いて、身体の芯からじわじわと回復していく感覚があった。

それでも、ふと気を抜くとあの人のことばかり思い出してしまって、心だけはまだ療養が必要だった。

そんなある朝、布団の中でスマホを確認すると、一通のメッセージが届いていた。

──「今日は来れるか?重要な話がある」──
送り主は、上司の狩野だった。

短く、しかし妙に間を持たせる文面。

絵文字もなく、そっけないが、どこか急かすような雰囲気があった。

(重要な話……?)

思わず体を起こして、背もたれにもたれながらしばらくスマホを見つめる。

狩野が「重要」とまで言うのは珍しい。
一体何の話だろう。
復帰初日にして呼び出されるなんて、胸騒ぎもするけれど、行くしかなさそうだ。

奈緒は立ち上がり、カーテンを開けた。
久しぶりに見た朝の光は、少し眩しくて、目を細める。

鏡の前で自分の顔を見ると、まだ少し青白いが、倒れる前ほどではない。

よし。

気合いを入れて身支度を整え、軽く食事を済ませてからバッグを肩にかけた。

足取りはまだ万全ではないが、靴を履いて玄関を出ると、冷たい風が頬にあたり、気持ちが少しだけ引き締まる。

奈緒はいつもの道を、久しぶりに会社へと向かった。
< 108 / 204 >

この作品をシェア

pagetop