酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
交番の奥、事務スペースの隅で、瀬戸は川合に声を低くして話しかけた。

「とりあえず、しばらくここで休ませます。完全に酔ってるんで、保護対象にしてもいいかと」

川合は椅子にもたれたまま、鼻で笑う。

「保護って……そこまでじゃないだろ。自力で歩けてんだから。報告書面倒だし、やめとけよ」

瀬戸は無言で川合を見た。
その視線に、軽く肩をすくめて返す。

「どうせすぐ迎えに来る家族か同僚いるだろ。酔い覚めるまで座らせときゃいいって」
「でも――」
「でも、じゃない。ほら、ああいうのに関わると、なぜかこっちが面倒見る流れになるんだって。見たろ、あのテンション」

瀬戸は渋い顔で黙った。
たしかに、あの女――水原奈緒――の酔っ払いっぷりは、手慣れた面倒さがあった。

と、そのとき。

「イケメンお巡りさぁぁぁん!!」
交番内に、甲高い声が響き渡った。

「けっこんしてぇぇぇぇ!!」

瀬戸と川合、同時にフリーズ。

その声の主はもちろん、椅子にゆらゆら揺れながら座っている奈緒だった。

……なぜ今そのテンションになるのか、まるでわからない。

一拍の沈黙ののち。

「……おい瀬戸。結婚してやれ」
ニヤついた顔で、川合が肩を叩いてくる。
「ご指名入ったぞ? 断ったら傷つけるぞ?」

「しません」
瀬戸は即答した。

その声が、さっきよりも少し低かったのは、気のせいかもしれない。
< 11 / 204 >

この作品をシェア

pagetop