酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
川合がニヤニヤ笑いながらデスクに戻っていくと、瀬戸は無言のまま奈緒のほうへ目を向けた。

椅子に腰かけた彼女は、先ほどのテンションが嘘のように静かになっていた。
うつむき加減で、首がすこしずつ傾いていく。

目はとろんと半分閉じていて、今にも落ちそう。

……まさか、寝るつもりか?

「水原さん」

瀬戸が声をかけても、返事はない。
呼吸はゆっくりで、もう眠りに入っているようだった。

「寝ないでください」

少しだけ声を強める。
奈緒はぴくっと肩を動かし、ゆっくり顔を上げた。

「……え〜……今いいとこだったのに〜」
「どこですか」

「夢の中……お巡りさんとハワイにいた……」
「行ってません。起きてください」

その冷たい返答に、奈緒はまたむくれたような顔をして、椅子の背にもたれる。

「じゃあ……お水買ってきてくれたら、起きる〜」

「買いません」

「けち……」

ぼそりと呟いて、奈緒はまた目を閉じようとする。

瀬戸は大きくひとつ、ため息をついた。

「とりあえず、タクシー呼ぶか……」

独り言のように呟いたその声は、川合の笑いにかき消された。
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