酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
昼食時。
奈緒は初めて都丸にランチに誘われた。

社食の少し人気のない窓際の席。
隣同士に腰を下ろすと、都丸は少し照れたように笑って言った。

「本当、ごめんね。途中で投げ出すようなことになって」

奈緒は首を振って微笑んだ。
「いえ、私もこの取材、やりたかったので。棚からぼたもちって感じです」

その言葉に、都丸はホッとしたような表情を浮かべた。

「私ね、実は不妊治療しててさ。やっと授かった子で……もし妊娠がわかったら、仕事はセーブするって最初から決めてたの。もちろん、今回も本気でやるつもりだったけど、その矢先のことで」

都丸は少し視線を落としていた。

奈緒はそっと口を開く。
「……おめでとうございます」

小さな声だったが、確かな祝福の気持ちがこもっていた。

都丸は、顔を上げて柔らかく笑った。

「ありがとう。産休に入るまでは全力でフォローするから。私の人脈とかも使ってほしいし、動けるうちに紹介するからね」

奈緒は思わず背筋を伸ばして、深く頭を下げた。
「そこまでしていただけるなんて……ありがとうございます」

都丸は首を振って笑った。

「ううん、私の持ってるものでよければ、みんなに授けたいくらいなのよ。特に水原さんは信頼してるわ。今まで言う機会がなかったんだけどね」

その一言が、奈緒の胸にじんわりと広がった。

今まで、どこか壁を感じていた都丸。

けれど今、こうして向かい合ってみると、想像していたよりずっとあたたかい人だった。

「意外だったな……こんな優しい感じの人だったなんて」

そんなことを心の中で呟きながら、奈緒は思った。

この優しさがあるから、取材でも相手の本音を引き出せるのかもしれない。

都丸の記者としての魅力に、初めて気づいた気がした。
< 111 / 204 >

この作品をシェア

pagetop