酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
会議室にはテレビ局のディレクターとプロデューサー、奈緒の所属する新聞社の取材班、そして新宿署の広報担当者が顔を揃えていた。

テレビ局との合同取材に向けての初回打ち合わせ。

空気には適度な緊張感が漂っている。

奈緒は配られた進行資料と構成案に目を通しながら、メモを取りつつ話に耳を傾けた。

「今回の特集は“リアルタイムTOKYO”内での密着企画です」とディレクターが切り出した。

「テーマは“現場の警察官の日常と奮闘”。新人と中堅のペアに密着し、街の安全を支える姿を、可能な限りリアルに描きます」

新宿署の広報担当者が補足する。

「今回、署内での検討の結果、密着対象となるのは杉崎巡査と瀬戸巡査部長のペアです。日々の巡回から交番勤務、緊急対応まで、ありのままを記録してもらう形になります」

奈緒は手元の資料に目を戻した。名前の書かれた箇所を何気なく指でなぞる──「瀬戸 拓真」。

それだけで、胸の奥にじんわりと温かいものが広がる。

そして自然と、表情が和らいでいるのに気づく。

「記者側からは、密着の合間にインタビューや日常の一幕を活字で補完する形になります」

と、奈緒の上司が続ける。

奈緒は小さく頷きながら、仕事に集中するふりをして、それでも心のどこかでは瀬戸の姿を思い浮かべていた。

再び、同じ時間を、同じ目的のために共有できる。
そのことが、なにより心強く感じられた。
< 113 / 204 >

この作品をシェア

pagetop