酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
「そして!」

花夏が勢いよく言葉を続ける。

「表情のギャップも大事。真剣に仕事してる時と、オフタイムの時とで、ちゃんと切り替えるのよ」

奈緒は箸を止めて、じっと耳を傾ける。

「瀬戸さんと話す時じゃなくても、たとえばテレビ局のクルーや広報担当の人と話す時も、オフタイムはしっかり笑顔で。ハッピーオーラ、これが最強の武器」

花夏は、両手で大きく輪を描くようにしながら力説する。

「だってさ、きっと皆んな奈緒に微笑まれたら、見惚れちゃうわよ。真面目な顔とのギャップで、ほら、心を撃ち抜かれるってわけ」

奈緒は少し呆れたように笑いながらも、自然と頬が赤らむのを感じていた。

「……花夏って、意外と恋愛テクニシャンだよね」

「失礼ね、“意外と”とか言わないでよ。それなりに人生経験積んでますから」

串焼きを口に運びながら、花夏は得意げに笑う。

奈緒はその横顔を見ながら、いつの間にか真剣に花夏のアドバイスを心の中に刻み込んでいた。

現場では真剣に。けれど、それだけじゃなくて。

ふとした時に見せる柔らかい笑顔──それが人の心を動かすのかもしれない。

そう思うと、ほんの少し、これからの取材が楽しみに思えてきた。
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