酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
中島が案内してくれたのは、新宿三丁目にある「トラットリア・デル・ソーレ」だった。

昼時で店内は賑わい、あちこちのテーブルからパスタと焼きたてパンの香ばしい匂いが漂っていた。

オープンキッチンの奥では、シェフが忙しそうに鍋を振っている。

ふたりは窓際の二人席に通され、ランチセットを注文した。

奈緒は海老とアスパラのレモンクリームパスタ、中島は牛ほほ肉のラグーソース。

料理が運ばれてくるまでの間、中島がふいに尋ねてきた。
「水原さん、うちの警察官、どう思います?」

突然の問いに奈緒は一瞬戸惑い、目を瞬かせた。
「……どう、というのは?」

中島は苦笑いしながら言った。

「いや、一般の方から見て警察官ってどう映るのかなって。怖いとか、話しかけにくそうとか。……ただの興味なんですけど」

奈緒ははっとして、少し微笑んだ。

「皆さん、とても気さくで話しやすいですよ。私も何度か助けてもらったことがあって、真摯に対応してくださいました。頼りにしています」

その言葉に、中島はほっとしたように安堵の表情を浮かべた。

やがて料理が運ばれてきて、会話は自然と今回の取材内容に移っていく。

「今回密着するペアの中でも、瀬戸は若手の警察官でも結構目立っていて、臨機応変にどんな現場にも冷静に対応できるって、期待されてるんですよね」

中島がそう言ったとき、奈緒の胸が少し温かくなった。

「そうなんですか」
まるで自分のことのように嬉しかった。

けれどそのあと、中島はさらりと言った。

「でもね、そろそろあいつ、3年なんですよ。だから来春、異動の時期で。地域課ならまた交番行くんだけど、なんとも怪しいんですよね」

中島は笑っていたが、奈緒の胸に一抹の不安が湧いた。
「……転勤、3年に一回ですもんね」

そう言いながら、コクリと頷いた。
フォークに巻いたパスタが少し重く感じた。
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