酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
「ところで」と、ナイフとフォークを一旦置いた中島が声のトーンを落として前置きした。

「噂で聞いたんですが……水原さん、酔ってあの交番に保護されたことあるって、本当ですか?」

奈緒は、ぎくりと肩を揺らした。
え、なんでこの人まで知ってるの……?

「あはは……中島さんもご存知だなんて……恥ずかしくて穴があったら入りたいです……」

なんとか笑ってごまかしながらも、内心の焦りは隠せなかった。

「交番でやらかしたら、なんでも共有されちゃうんですよね」
中島は笑いながら水をひと口含んだ。

「えええ、もしかして、記録に残ってたり……?」
奈緒の声は震えていた。

「いや、記録はないですけどね。でもやっぱり、ああいう仕事柄、笑えるエピソードにはみんな食いつくんですよ。
特に若い巡査が女性を保護したなんて話は、格好のネタですよ」

奈緒の体温が、じわじわと上がっていくのを感じた。
頬が熱い。

背中もうっすら汗ばんでくる。

目眩がしそうだった。
今すぐ過去の自分に戻って、あの夜の自分を殴ってやりたい――。

苦笑いを浮かべたまま、奈緒は黙ってパスタをひと口、口に運んだ。
味がまったくわからなかった。
< 120 / 204 >

この作品をシェア

pagetop