酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
2月1日、木曜日の朝。
奈緒はまだ薄暗い空の下、新宿東口交番の前に立っていた。

今日の取材は午前7時から午後6時まで。

とくに動きが活発になるのは、通勤ラッシュにあたる午前8時台と午後5時前後だった。

人が一斉に動く時間は、それだけトラブルも起こりやすい。

テレビ局のクルーと共に、奈緒は瀬戸と杉崎のペアに密着しながら、巡回に同行した。

午前8時15分。
新宿駅東口の雑踏の中で、無線が一斉に鳴った。

「新宿駅構内、痴漢の通報あり。現場に近い交番員、至急対応を」

瀬戸と杉崎が素早く視線を交わすと、
「行きましょう」と短く奈緒たちに告げて、早足で動き出した。

奈緒とテレビ局スタッフも遅れまいと後に続く。

現場はホームから少し外れた階段下のベンチだった。

制服を着た女子高生が一人、俯いたまま肩を震わせて泣いている。

近くには駅員と通報者と思しき女性が立っていた。

瀬戸は到着するなりまず、女子高生にゆっくりと声をかけた。

「こんにちは。警察です。今、女性の警察官もこちらに向かっていますからね。大丈夫、安心してください」

決して詰め寄らず、声のトーンも抑えて、ひとつずつ確認をしていく。

杉崎はその間に駅員から状況を聞き取り、鉄道警察との連携を即座に取った。

防犯カメラの映像確認の依頼と、加害者と思われる男の特徴のヒアリング。

その一つ一つの動きに、まったく無駄がない。

数分後、交番から女性警察官が駆けつけ、女子高生を優しく導いて別室へと移動。

「お母様にもこちらからご連絡させていただきます」と瀬戸が伝えると、少女は小さく頷いた。

奈緒はその一部始終を見ながら、言葉ではなく行動で示す瀬戸たちの姿に、胸を打たれていた。

現場に駆けつける速さ。
話を聞く丁寧さ。
関係機関との連携。

すべてが緊張感の中で、冷静に進んでいた。

それはただの“警察の仕事”ではなく、目の前にいる誰かを守るための行動そのものだった。
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