酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
12時をまわり、ランチに行き交う人の流れができはじめた頃。

奈緒たちは交番の一角を借りて、それぞれ持参した昼食を広げていた。

交番内の警察官たちも交替で昼食をとっており、
コンビニ弁当をかき込む者もいれば、包みを開いて愛妻弁当を広げる者の姿もあった。

奈緒はちらりと瀬戸の方に目をやる。

彼の手元には、落ち着いた色の布で包まれた弁当箱。

中身を開くと、彩りよく詰められたおかずとご飯が見えた。

——コンビニじゃない。誰かが作ったもの。

心臓が、どくん、と跳ねた。
まさか……彼女?
いや、それとも……奥さん?

目を凝らしてみるが、瀬戸の左手薬指には指輪は見当たらない。

けれど、それが即ち「いない」という確証にはならない。
不安が、じわりと胸に染み込んでくる。

だが、あまりじっと見るのも失礼だ。

奈緒はそっと目を逸らし、何事もなかったように自分の食事へと視線を戻した。

持ってきたおにぎりの包みを開け、ゆっくりとひと口。

まだ気持ちはざわついたままだったが、無理にでも手を動かすことで平静を保とうとした。

その時——

交番内に無線が鳴り響いた。

「警視庁本部より新宿東口交番へ。新宿駅構内、南口改札前の雑貨店にて万引き事案発生。
 店員が現行犯で取り押さえ中。至急現場へ向かえ」

「行きます」

瀬戸が食べかけの弁当箱をぱたんと閉じ、即座に立ち上がった。

その背筋は、昼休憩とは思えないほどにきりっと伸びていた。

それに続くように、杉崎も立ち上がる。
取材班のテレビ局スタッフが機材を抱え、奈緒も立ち上がる。

昼休憩はそこで終了。
現場へ向かう準備が静かに、けれど迅速に始まっていた。
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