酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
新宿駅南口改札を抜け、雑貨店が並ぶ通路に差しかかると、すでに人だかりができていた。

その中心には、店員と中年の女性が揉み合うようにして立っていた。

「ちょっと! 触らないでよ!」
「申し訳ありませんが、防犯カメラに映ってるんです。商品をバッグに入れていましたよね」

瀬戸と杉崎が人垣を割って進み、店員に声をかけた。

「警察です。状況を教えてください」

店員が素早く説明を始めた。
女性が店内でアクセサリーを一つ、バッグに入れるのを見たとのこと。

レジを通らずに外へ出ようとしたところで声をかけたという。

「映像は?」
「こちらです」

杉崎がタブレットを受け取り、映像を確認する。

瀬戸は女性のそばにしゃがみ、目線を合わせるようにして声をかけた。

「お名前を伺ってもよろしいですか」
「……どうせ、もう全部ばれてるんでしょ」

女性はうつむきながら、小さく答えた。

バッグの中には未会計のアクセサリーが確かに入っていた。

「お怪我はありませんか」
「……ないわよ」

瀬戸は無線で交番に連絡を取り、現場での簡易な取り調べに備える。

杉崎が店員に丁寧に礼を言いながら、別の場所で話を聞く。

奈緒たちは少し離れた場所からカメラを構え、表情の変化ややりとりを記録していく。

瀬戸の対応はあくまでも冷静だった。

しかし、女性の不安定な感情にも丁寧に寄り添い、非難する言葉を一切使わずに状況を整理していく。

奈緒は、その姿を見つめながら、また胸の奥がじんと温かくなるのを感じていた。

これが、彼の仕事なのだと。
誰かを責めるのではなく、事実を見つめ、穏やかに、しかし確実に正す。

ほんの数分のやり取りの中に、瀬戸の人柄と職務への誠実さがにじみ出ていた。
< 124 / 204 >

この作品をシェア

pagetop