酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
夜の街に潜む影
数日間の取材を経て、3月に入り、空気にはまだ冷たさが残るものの、夜風の中にかすかな春の匂いを感じるようになっていた。
その日は特に動きのある一夜となった。取材は夜7時から翌朝9時までの夜間密着。
午後9時半、新宿区内の繁華街で、傷害を伴う喧嘩事案の現場に駆けつける。
男たちの怒鳴り声と割れるような叫びが交差し、通行人のざわめきが波のように周囲に広がっていた。
杉崎が一人の男の腕を抑え、瀬戸は別の男に壁際まで下がるよう説得する。
怒号、割れた瓶、血のにじむ拳。
その後も、夜中2時をまわった頃、今度は飲酒運転の疑いで車両を停めたパトカーから応援要請が入る。
呼気中のアルコールを検出した運転手が車内で暴れているという。
さらに午前4時、繁華街の裏路地で、酩酊し寝込んでいた若者数名を発見。
瀬戸と杉崎が声をかけると、酔った男たちは意味のない言葉を吐きながら、ゆっくりと起き上がった。
そのうちの一人、茶髪でフードを深く被った若い男が、突然怒鳴り声を上げ、瀬戸に近づきながら押し返すように手を振り回し始めた。
杉崎が「やめろ!」と声を荒げて止めに入るが、その瞬間、別の男も地面に転がっていた空き缶を蹴り飛ばしながら立ち上がり、警察官たちに詰め寄る。
混乱が一気に拡大し、瀬戸と杉崎は同時に複数の男を制御しようとするも、手が足りない。
そんな中、最初に騒ぎ出した男が、ふらつく足取りのまま、テレビクルーのカメラマンに顔を寄せ、
「撮ってんじゃねえよ」と吐き捨てたかと思えば、奈緒の方へと視線を向けた。
「あ、可愛い子いんじゃん」とにやついた顔で呟くと、フラつきながらも勢いよく奈緒に抱きついてきた。
奈緒は一歩後ろに引いたが間に合わなかった。
男の腕が奈緒の肩を乱暴に引き寄せ、その体が押し当てられる。
「やめて!」と叫ぶ奈緒。
男の息が酒臭く、顔のすぐそばで笑っている。
瀬戸がその様子に気づき、暴れる男を片手で押さえながら、無線に手を伸ばす。
焦った声で、
「新宿三丁目交差点付近で対応中、男が暴れている。応援願いたい」
その一瞬の隙にも、奈緒は男の腕を引き剥がそうと必死に力を込めたが、酔っているはずのその腕は驚くほど重く、固く、びくともしない。
「離して、お願い…!」
声が震え、指先が冷たくなる。
驚きの直後に、凍りつくような恐怖が背筋を駆け上がってきた。
空気が喉に詰まりそうになる。
胸が苦しい。
心臓が早鐘を打つように脈打ち、全身の血が一気に沸き立つような感覚。
頭が真っ白になる。
「怖い──」
心の中で何度も繰り返される言葉。
誰か助けて、ここから逃げたい。
でも身体が動かない。
声にならない声を必死にこらえ、目に涙が滲む。
夜の繁華街の喧騒の中で、奈緒はただ、恐怖の中に立ち尽くしていた。
その日は特に動きのある一夜となった。取材は夜7時から翌朝9時までの夜間密着。
午後9時半、新宿区内の繁華街で、傷害を伴う喧嘩事案の現場に駆けつける。
男たちの怒鳴り声と割れるような叫びが交差し、通行人のざわめきが波のように周囲に広がっていた。
杉崎が一人の男の腕を抑え、瀬戸は別の男に壁際まで下がるよう説得する。
怒号、割れた瓶、血のにじむ拳。
その後も、夜中2時をまわった頃、今度は飲酒運転の疑いで車両を停めたパトカーから応援要請が入る。
呼気中のアルコールを検出した運転手が車内で暴れているという。
さらに午前4時、繁華街の裏路地で、酩酊し寝込んでいた若者数名を発見。
瀬戸と杉崎が声をかけると、酔った男たちは意味のない言葉を吐きながら、ゆっくりと起き上がった。
そのうちの一人、茶髪でフードを深く被った若い男が、突然怒鳴り声を上げ、瀬戸に近づきながら押し返すように手を振り回し始めた。
杉崎が「やめろ!」と声を荒げて止めに入るが、その瞬間、別の男も地面に転がっていた空き缶を蹴り飛ばしながら立ち上がり、警察官たちに詰め寄る。
混乱が一気に拡大し、瀬戸と杉崎は同時に複数の男を制御しようとするも、手が足りない。
そんな中、最初に騒ぎ出した男が、ふらつく足取りのまま、テレビクルーのカメラマンに顔を寄せ、
「撮ってんじゃねえよ」と吐き捨てたかと思えば、奈緒の方へと視線を向けた。
「あ、可愛い子いんじゃん」とにやついた顔で呟くと、フラつきながらも勢いよく奈緒に抱きついてきた。
奈緒は一歩後ろに引いたが間に合わなかった。
男の腕が奈緒の肩を乱暴に引き寄せ、その体が押し当てられる。
「やめて!」と叫ぶ奈緒。
男の息が酒臭く、顔のすぐそばで笑っている。
瀬戸がその様子に気づき、暴れる男を片手で押さえながら、無線に手を伸ばす。
焦った声で、
「新宿三丁目交差点付近で対応中、男が暴れている。応援願いたい」
その一瞬の隙にも、奈緒は男の腕を引き剥がそうと必死に力を込めたが、酔っているはずのその腕は驚くほど重く、固く、びくともしない。
「離して、お願い…!」
声が震え、指先が冷たくなる。
驚きの直後に、凍りつくような恐怖が背筋を駆け上がってきた。
空気が喉に詰まりそうになる。
胸が苦しい。
心臓が早鐘を打つように脈打ち、全身の血が一気に沸き立つような感覚。
頭が真っ白になる。
「怖い──」
心の中で何度も繰り返される言葉。
誰か助けて、ここから逃げたい。
でも身体が動かない。
声にならない声を必死にこらえ、目に涙が滲む。
夜の繁華街の喧騒の中で、奈緒はただ、恐怖の中に立ち尽くしていた。