酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
奈緒は、自席に戻ると取材ノートを広げた。
何日にもわたって書き溜めたメモややりとりの記録。

交番でのやり取りを読み返すたびに、脳裏に浮かんでくるのは――瀬戸のあの、柔らかくて温かな笑顔だった。

「私、どんだけ意識してるの……」
そう呟いて、苦笑しながらスケジュール帳を開いた。

交番の取材予定を確認する。
残っているのは、あと一度。
3月24日――最後の密着取材。

その日付を指先でなぞる。

「結局、何も進展しないまま終わるのかもな」
小さくため息をついた。

あの日、聞けなかった“お弁当”の話も、気になったままだ。
取材中、瀬戸は毎日弁当を持ってきていた。

朝の交代後も、すぐには帰らず残業だと言っていたし、24時間勤務の合間にあれだけきっちりした弁当を用意しているとなると――
やっぱり、女性の存在があるのだろう。

胸がずしりと重たくなった。

「……なんとかして、この恋心、昇華しないと」

奈緒はそっとスケジュール帳を閉じた。
その音だけが、静かな編集部に小さく響いた。
< 141 / 204 >

この作品をシェア

pagetop