酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
会社からの帰り道、奈緒は駅前の広場で足を止めた。

小さなスピーカーから流れるアコースティックギターの音色。

路上ライブをしている若いシンガーが、マイクに向かって情熱的に歌っていた。

昔から根強く人気のあるラブソング。
一節が耳に届く。

「どんなに離れてても 心はそばにいるわ――」

奈緒はほんの少しの間、立ち尽くして聴いていた。

澄んだ声。
未来を明るく見通すような、希望を乗せた歌声だった。

だけど、そこに共感はなかった。

“こんなに近くにいるのに、心は離れたままだから。”

そんな言葉が、胸の奥でぽつりとつぶやかれた気がした。

身体の奥深くから、震えがじわりと湧き上がってくる。

その場所にこれ以上いられず、奈緒は足早に駅へ向かって歩き出した。
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