酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
奈緒は瀬戸の隣がどうにも落ち着かず、たわいもない世間話を交わしながらグラスを傾けていた。

ほんのり酔いが回るにつれて、初めて会ったあの夜のことがふいに思い出される。

暗い夜道。
突然現れて助けてくれた人。

今、その人の隣に座っているという事実が、なんだかくすぐったくて、一人でこそっと頬を赤らめた。

話が弾む中で、瀬戸はふと「自分、四月付けで異動なんです」とさらりと口にした。

するとすかさず杉崎が、「えー寂しいです~」と甘えたように声を上げて笑いを誘った。

奈緒は心の奥が少しだけざわつく。
やっぱり、転勤しちゃうんだ。

「遠いところですか?」と、努めて平静を保って尋ねた。

瀬戸はグラスを指先でゆっくり回しながら、「明日までは規則で言えない決まりなんですけど、そんなに遠くはないですよ」と言った。

奈緒は少し酔った勢いで、ふと気が緩み、「でも、交番では会えなくなっちゃうんですね」と口にしていた。

瀬戸は微笑んで、「はい」と一言。

そしてふと尋ねるように、「水原さんは、今後も新宿ですか?」と聞いた。

奈緒はグラスを置いて、まっすぐに答えた。
「いえ、私は東京日報に転籍することになって」

それを聞いた川合が、「えー、東京日報って三大新聞社じゃん。バンキシャとかなっちゃうのー?」と明るく反応する。

横で杉崎がとぼけた顔で、「とうきょうにっぽう……ってなんですか?」と言って場を和ませた。

瀬戸は自分のグラスにそっと視線を落として、「それなら、僕、春からその辺ほっつき歩いてるんで、会うかもしれませんね」と言った。

奈緒は、その言葉にふっと目を細めながら、瀬戸と視線を絡ませた。
「えっ……霞が関……本庁ですか?」

瀬戸は、柔らかく笑いながら、「さぁ、どうでしょうね」とだけ返した。

それは、もう答えだった。
この人は春から、警視庁本庁に転勤するのだ。
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