酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
「……来ました」

交番の前に、タクシーのヘッドライトが止まった。

「じゃあ、帰りましょう」

瀬戸が声をかけると、奈緒は「うん〜」と間延びした返事をして、よろよろと立ち上がった。
一歩進んではぐらつき、止まってまた歩く。
タクシーまでの距離がやけに長く感じられる。

瀬戸は、無言でその後ろをついていった。
万が一転んでも受け止められるように、気を張りながら。

ようやくタクシーのドアにたどり着き、奈緒はシートに崩れ込むように乗り込んだ。

ドアが開いたままの車内で、瀬戸が声をかける。

「水原さん。住所、言ってください」

奈緒は助手席のヘッドレストに額を預けたまま、ぼーっと前を見ている。

「水原さん、住所。運転手さんに教えてください」

少し間を置いて、奈緒がようやく口を開いた。
呂律のあやしい声で、なんとか自宅の住所を伝える。

瀬戸はそれを確認すると、運転手に小さく頭を下げた。

「お願いします。すみません」

「はいよ」

運転手は気のいい声で答え、ドアが自動で閉まる。

タクシーがゆっくりと動き出し、やがて夜の街に消えていった。

瀬戸は、静かになった交番前でひとつ、長い息を吐いた。
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