酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
奈緒は羞恥と酔いと、どうにもならない気持ちでぐちゃぐちゃになって、その場でぽろぽろと泣き出した。

手の甲で必死に涙を拭うが、まったく追いつかない。

あたりは静まり返っていた。

誰も、何も言わない。

その空気を破ったのは川合だった。
「瀬戸、泣かせました」

小さくつぶやいたその一言に、周囲の警察官たちは肩をすくめたり、顔を手で覆ったり、共感性羞恥に耐えかねて下を向いたりしている。

奈緒は、もうどうにでもなれという気持ちで、しゃくり上げながら声を出した。

「でも、取材のとき……毎日お弁当持ってきてたから」

「きっと奥さんいるんだろうなって……」

「だから、ずっと気持ちに蓋してきたのに」

「どうして……いつも、こじ開けようとするんですか」

「ほんとに、やめてください……」

顔を上げた奈緒の目は真っ赤に泣き腫れていた。

その視線を正面から受け止めていた瀬戸は、無言のまま、静かに右手を差し出した。

その右手で、そっと奈緒の左手を導いて、自分の手の上に重ねた。

「僕の手は……これでも、凶器ですか」

その言葉に、奈緒はまた涙があふれて、泣きながら首を横に振った。

そして震える声で、ぽつりと言った。

「……あたたかいです」
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