酔って寝てたら保護されましたが、これが恋の始まりだなんて聞いてません〜警察官の甘やかな独占欲に包まれて〜
静寂を破るように、川合が言った。
「だから結婚しろって言っただろ、俺は最初からわかってた、二人は運命なんだよ、な?」

その一言で、場の空気が弾けた。

周りの人たちが一斉に笑い出し、杉崎が「それ、さっきから言いたくてウズウズしてたんでしょ!」と突っ込み、別の警察官が「いやでもマジでいい感じだったよなー」と肩を揺らして笑った。

あちこちから茶化すような声が飛び交い、懇親会の場はふたたび温かく賑やかなざわめきに包まれた。

けれど、奈緒と瀬戸の間には、別の空気が流れていた。

奈緒は、まだ手のひらに残る瀬戸の体温を感じながら、視線をそっと伏せた。

胸がじんわりと熱くなっている。

苦しくて、嬉しくて、恥ずかしくて、切ない。

ぐしゃぐしゃになった感情の真ん中に、小さな灯がともった。

この人の言葉は、あまりにも真っ直ぐで、あまりにも優しくて。

本当は、触れられるだけで壊れそうなくらい、ずっと好きだった。

瀬戸さんにとって、私はただの取材相手だったかもしれない。

でも、それでもいい。

あの時笑って交番を後にした私を、ちゃんと見てくれていたと知れただけで、救われた気がした。

そして――まだ、間に合うかもしれないと、心の奥底でそっと願っていた。
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